婚礼衣裳



2 お色直しの衣裳
 披露宴の途中で新婦が中座し、服装を式服から別のものに改めることをお色直しという。お色直しは日本独特の習慣で、昔は3日間にわたって婚礼の祝があり、3日目に「白無垢」から華やかな衣裳に着替えて両親と対面した。白無垢の衣裳は、花嫁が婚家の家風に染まるという意味があるといわれているが、実際は結婚式は神事であって、神に仕える時は白の衣裳を着ることが条件であったのである。そして披露宴では、神事から俗事に移ることをお色直しの衣裳によって表したのである。
 現在では式服で披露宴に臨み、途中でパーティ用の服装に変えるのが一般的である。また打掛で挙式し、ウエディング・ドレスをお色直しに着たり、逆にウエディング・ドレスから打掛にかえたりして、両方を着てみたいという人の希望をかなえている。

(1)和装の場合
 和装のお色直しは振袖・中振袖・訪問着などが一般的である。式服が洋装ならお色直しは和装で、式服が和装ならお色直しは洋装で、というように変化をつけると効果的である。一般に新郎のお色直しでは、新婦が和服なら新郎も紋付・袴。洋装ならタキシードかダークスーツに変えている。式服に限らずお色直しも、新郎・新婦の服装のバランスが大切で、二人の服装の格式が調和が取れるよう心くばりをする。

(2)洋装の場合
 お色直しの服装として、洋装では披露宴が夜の場合はロングのイブニング・ドレス、昼の場合はアフタヌーン・ドレスが正式である。イブニング・ドレスはウエディング・ドレスと違って、背や胸を大きく明けたデザインとなる。

3 ブーケ
 ブーケはウエディング・ドレスやお色直しのイブニング・ドレスには、重要なアクセントである。挙式にはコチョウ蘭、カトレア、バラ、などの白い花を使う。ブーケのスタイルには、滝のように下に流れるキャスケードが多く使われている。お色直しもキャスケード、トライアングル(逆三角形)、クレッセント(三日月形)が多く、ラウンド(コロニアルともいう丸形)は少なくなっている。新郎はタキシードの衿に、ブートニアをつける。ブートニアも新婦と同じ花が使われる。
 お色直しに持つブーケの形は、ユニークになりつつある。色々な花を集めたものや、赤いチューリップを金のりボンでくくったもの、白いかすみ草だけのものなど個性に合わせて用いられている。頭にも同じ花をデザインしてつける。
 ブーケは式がお開きになったら、身近な未婚の女性にプレゼントする。
又ブーケトスといってブーケを投げるという習慣もある。

4 新郎の婚礼式服

(1)和装
 和装の第一礼装は、黒五つ紋付き長着、羽織、袴である。羽織と上着は黒羽二重の染め抜き五つ紋、下着はねずみ色か茶色の羽二重、これより淡色の羽二重の長襦袢に白羽二重の半衿をかける。肌着はさらし、帯は錦織の角帯、袴は仙台平の黒か茶の縞で、馬乗り袴が正式。白扇を持つ。羽織ひも、足袋は白。ぞうりは畳表に白い鼻緒のもの。最近は正式な黒紋服に対して、略式紋服の白や色紋服も使われている。

(2)洋装
 燕尾服はテールコートとも呼ばれ、男性の夜間の正式礼装で、結婚式のほか格式の高いパーティにも着用する。正式な燕尾服は上着とも黒。チョッキ、ワイシャツは白、カラーはシングルの立衿カラー。胸のボタンとカフスボタンは真珠か白貝の対。ネクタイは白のボウタイ、靴下は黒、靴は黒エナメルの短靴、ハンカチーフは白麻、手袋は白革。なお、衿のボタン穴に、ブートニアといって新婦の花束のなかから、バラなどの生花を一輪さす。
 モーニング・コートは昼の正式礼装である。上着は黒の無地で、素材はドスキンやカシミヤなど。ズボンは黒とグレーなどの縞模様。ダブルカフスを真珠か白貝のカフスボタンで止める。ネクタイは黒白の縞かグレーの無地、靴下は黒、靴も黒の紐付き短靴、手袋は白かグレーを用いる。
 若さを出してシルバーグレーなどのモーニング、ベストを白やグレーにしたり、アスコットタイなどにすることもよい。ワイシャツは白、カラーは立衿をカラーボタンで止めたもの、または共衿でもよい。
 タキシードは燕尾服の略装として夜に用いるが、夜の礼装として一般化し、また昼の挙式でも着用する人が増えている。上着とズボンは黒ラシャかドスキン、形は普通の背広型で剣衿、へちま衿、打合せはダブルとシングルがある。ワイシャツは白、ひだ胸で、黒のボウタイを締める。その他は燕尾服に準ずる。

(3)新郎衣裳一式
◎和装正式
@羽織(黒羽二重に染め抜き五つ紋。羽織紐は白)
A着物(黒羽二重に染め抜き五つ紋)
B帯(西陣織などの角帯)
C袴(仙台平の馬乗り袴)
D下着(紺などの重ね着。長襦袢は下着と同色。)
E半衿(白)
F足袋(白キャラコ)
G草履(畳表で白鼻緒)
H白扇

◎洋装正式
@燕尾服(夜),モーニング(昼)一揃
Aワイシャツ(白,セミソフトカラー。ダブルカフス。カフスボタンは真珠・または白貝の対)
Bネクタイ(黒白縞の結び下げか蝶結び)
C手袋(白かグレー)
D靴下(黒)
E靴(黒,.紐つき短靴)
Fハンカチーフ(白,麻)
G外套(無地,白絹マフラ−)

◎洋装略式
@タキシード一揃い
Aワイシャツ(白,ひだ胸)
Bネクタイ(黒,蝶結び)
C〜G正式に準ずる

5 十二単と束帯

◎十二単(じゅうにひとえ)
 平安時代に始まった宮廷婦人の正装である。その構成は,下着の単の上に張袴(はりばかま)をはき,その上に袿(うちき)という広そでの袷を何枚も重ね,表衣を着た。腰には裳(も)をつけ,この上部についた小腰という帯を前で結び,両脇の引腰という細い帯は自然にたらした。さらにこの上から唐衣(からぎぬ)というたけの短い表衣をはおった。髪は垂髪(すべらかし)であったが,髪飾りとして釵子(さいし)などをつけ,手には檜扇(ひおうぎ)をもった。袿を何枚も重ねるので十二単という。

◎束帯(そくたい)
 平安時代以降の朝服の名。天皇以下文武百官が朝廷の公事に着用する正服。衣冠・直衣を宿直(とのい)装束というのに対して,昼(ひ)の装束という。冠・袍(ほう)・半臂(はんぴ)・忘緒(わすれお)・下襲(したがさね)・単(ひとえ)・衵(あこめ)・表袴(うえのはかま)・大口・石帯(せきたい)・魚袋(ぎよたい)・襪(しとうず)・靴(かのくつ)(または浅沓)・笏(しやく)・帖紙(たとうがみ)・檜扇(ひおうぎ)などを具備し,武官は別に太刀を佩き,平緒を垂れる。



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