披露宴 |
結婚式が終わると、両家の親戚や恩師、先輩、知人など、ゆかりのある人を招いて披露する宴会が始まる。披露宴の形式は全員が椅子席について会食するディナー形式が一般的となっている。 1席次とテーブルの配置 席次には大きく分けて日本式の席次と西洋式の席次がある。今日では洋風のスタイルを取り入れたとはいえ、これまでの習慣から純西洋風にはなっていない。日本式の席次の基本は、披露宴を例にすると通常会場入り口の正面奥が上座となり、ここに新郎新婦のメインテーブルが置かれる。テーブルには向かって左に新郎、右に新婦、新郎新婦の両わきが媒酌人夫妻の席となる。ディナー形式のテーブルの配置には、「長卓形式」と「円卓形式」がある。「長卓形式」は複数のテーブルを並列させたもので、改まった雰囲気となる。「円卓形式」は丸テーブルを適当な間隔に配置するもので、華やかな感じとなる。 (1)長卓形式の席次 |
ディナー形式の披露宴のメインテーブルに、向かって左に新郎、右に新婦、新郎の隣に媒酌人、新婦の隣に媒酌人夫人の席となる。新郎・新婦の前が主賓の席で、当日の招待客の上位の人から順に座る。この主賓の席は、他の招待客から新郎・新婦がよく見えるようにとあけておくことがある。メインテーブルに向って右側のテーブルが、新婦側の知人、友人、親族の順に並び、向って左側のテーブルに新郎側となる。席次はメインテーブルに近いところから主賓や来賓席となり、そのあとに親族、兄弟そして末席が両親の席となる。 (2)円卓形式の席次 円卓形式の席次は、同じように室内の入口に遠い所が上座で、メインテーブルとなる。そこに、新郎・新婦、媒酌人夫妻が着席する。次に主賓、上位の人から知人、友人、親族と第一卓以下の卓につく。両家の両親は末席に、新郎側は正面に向かって左、新婦側は向かって右側のテーブルに座る。丸テーブルの席では、新郎新婦のテーブルに背を向けて座る場所があるが、メインテーブルに近い距離の席が上席となるので、上位の人が座る。席次の決め方に対する心くばりは、洋式・和式の場合と同様に慎重に配慮する。 (3)和室の席次 日本間に座って行う披露宴では、床の間に「寿」のようなめでたい掛軸をかけ、松竹梅の生花をいける。床の間の前が正客、向って右が次客、左が三客で、家の者は下座になる。この位置から考えると、上座に当日の主賓、来客の上位の人、媒酌人、親族の長老の順に並び、入口に近いほうに主催者である新郎・新婦、両家の両親と並ぶのが礼儀にかなっているが、実際には床の間を背にして新郎・新婦、その両脇に媒酌人夫妻が並び、右側には新婦側、左側には新郎側の主賓の上位の人から知人、友人の順に続いて親族が並び、両親は末座の席になる。披露宴がはじまって、媒酌人、主賓の挨拶の時は新郎・新婦は座布団の脇におりて話を伺う。 また、両親、本人がお礼の言葉をのべる時も座布団からおり、末席に移って挨拶をする。 (4)立食式披露宴形式 若い人たちに人気があるのがパーティ形式の披露宴である。出席、退席の時間が比較的自由なので、忙しい人でも気楽に出席できる。 また、席が固定されていないので多くの人と歓談でき、飲食も自由で、堅苦しい雰囲気のない点が喜ばれている。また席次に頭を悩ませることもないから、主催者側にとっても助かる。ただ立っている時間が長いため、年配の出席者が多い場合は不向きである。会場のレイアウトは金屏風の代わりにフラワースタンドを立てるなど、新郎新婦の希望に従って自由に出来る。また式次第も自由に行うのが流行となっている。 (5)欧米と日本式スタイル 欧米社会の席次ではホスト、ホステスがテーブルに向かい合って座るのがヨーロッパ大陸式、両端に別れて座るのが英米流である。いずれの場合にもホステスの右隣りには主賓の男性、左隣には準主賓の男性が座り、ホストの右隣には主賓の女性、左隣には準主賓の女性が座る。日本の床の間での席次は、床の間を背にした位置が上座となる。正式な構えは中央に床の間、両脇に脇床があるデザインである。 これに対して向かって右側に床の間、左に脇床があるデザインを本勝手という。本勝手の席次は床の間に近いところが上座になるので、そこから順に右左右左と席が決められていく。 (6)席次表の名称 ディナー形式の披露宴では,各テーブルにそれぞれ「高砂」「松竹梅」「鶴亀」などの名称がつけられている場合がある。一般に新郎新婦が座るメインテーブルは「高砂」,続いて「松竹梅」,「鶴亀」が多く用いられるが,名称にはどちらが上位と決められたものではなく,会場ごとに違いがあるようである。 次にその主な意味だけを見ていきたい。 ◎高砂 能の曲名で名高い。そのストーリーは,春の初め肥後の国阿蘇宮の宮司友成が都に上る途中,播州高砂の浦で,松の木陰を掃く老翁,老婆に会い,高 砂の松と住吉の松を相生の松といういわれや,松がめでたいことをとかれる。やがて二人は松の精であることを名乗って小舟で去る。友成が住吉へ行くと住吉明神が現われて神舞を舞い,めでたい御代をことほぐというもの。 ◎松 祝いといえば松竹梅。松は天上から来臨する神の通路であり,能舞台の背後に飾る松の絵も、芸能が神様に捧げられた頃の名残である。中国では松は一年中その色を変えないので、不易の道徳の象徴であり、松の実、松葉は不老長寿の神薬であった。 ◎竹 竹は色を変えず、節の正しい成長ぶりがめでたいことの象徴とされ、そのまっすぐ高く伸びる性質が神の依代ともなって正月には門松として用いられている。また日本の笹は神楽を舞う女性が手に持つ呪物として用いられた。 ◎梅 梅は他の花に先がけて寒さのなかに咲くので高潔さをあらわす花の第一とされた。中国では松竹梅を「歳寒三友」と称して、人生を語る象徴となった。日本でも松竹梅は瑞祥となった。 ◎鶴亀 「鶴」は仙界の鳥で、一挙に千里を飛び、1600年たつと飲食もせぬ仙鳥となるとの伝説がある。また「亀」は千年たつと5色に輝き神霊の精となるという。このように鶴亀は神霊仙界のしるしとして重んじられた。 |