法律上の手続き



(1)結婚と法律上の届出
 結婚式をすませても、役所に婚姻届を提出しない限り、法的には夫婦とならない。したがって、式をあげ新婚旅行から帰って婚姻届を出す場合には、新婚旅行中は法律的には内縁関係となる。これを避けるためには、あらかじめ役場で婚姻届用紙をもらい、必要事項を記載しておいて、挙式の日に署名・押印して役場に届け出るのがよい。この場合に代理人による提出も認められている。届出には当事者の署名・押印の他、証人の署名・押印が必要である。結婚届が受理されると、新郎新婦は親の戸籍から抜け、夫の姓を名乗るときは夫を、妻の姓を名乗るときは妻を戸籍筆頭者とする戸籍が作られる。

(2)婚姻届の届出先と時期
 婚姻届を提出する役場は、夫または妻の本籍地、あるいは新居をかまえる住所地の役場、式場のある役場でもよい。ただし、従来の本籍地以外の役場に届け出る場合は、本籍地の役場の戸籍抄本をあらかじめ取り寄せておいて届出をする。その場合婚姻届は2通必要であったが、ファックスが普及した関係で1通でもよいことになっている。

(3)転居手続き
 結婚して住所が変わった場合、転出、転入届、電気、ガス、水道、電話等の手続き住所変更などが必要となる。転居手続きは、住所地の市区町村役場に転出届を出し、転入後にその地区町村役場に転入届を出す。なお転出届を出すと、転出証明書が交付され、これを転入届の際に提出する。なお同じ市区町村内での転居の場合には、転出・転入の手続きが一度に完了する。

新しい世帯主 転 出 届 転 入 届 転 居 届
届 出 者 本人、世帯主 本人、世帯主 本人、世帯主 本人、世帯主
届出期間 世帯主が変わってから14日以内 他の市区町村へ住所を移す前に 転入してから14日以内 転居してから14日以内
届 出 先 住所地の市区町村役場 旧住所地の市区町村役場 新住所地の市区町村役場 新住所地の市区町村役場
必要書類 印鑑、国民健康保険の加入者は保険証 印鑑、転出証明書は有料、国民健康保険の加入者は保険証 印鑑、転出証明書、国民健康保険の加入者は保険証 印鑑、国民健康保険の加入者は保険証

(4)結納と慰謝料
 「結納」は婚約が成立したことを明らかにし、両家の交わりを固めるために行われるものであるが、法律には「結納」についての規定がなく、何らかの原因で結婚が実現しなかった場合には、結納金や品物をめぐってトラブルがつきまとう。結納は結婚しない場合には返すものであるが、日本各地には「没収」や「倍返し」という慣習もみられる。結納を贈った側に責任があるときには結納の返還を求めることが出来ず、結納を受け取った側に責任がある場合には、その金額の倍を返すというものである。破談になった原因がどちらかによって、さまざまなケースが考えられるが、中殿背政男の 「性の法律」(朝日新聞社)には次のようにまとめている。

◎結婚に至らなかった場合
@どちらに責任があるというのでなく、双方の合意で解消された場合、結納は返す。
A結納を受けた側の責任で解消になった場合には、返還することはもちろんであるが、慰謝料などとして支払う分も含め、「倍返し」が慣習となっている地方もある。
B結納をおくった側の責任で解消された場合、返還を要求することはできない。
「没収」の慣習は、裁判のうえでも結果的にいかされている。
C双方に責任がある場合、その責任の大小によって返還すべきか、その金額はいくらかなどが決められる。
D双方に非がない場合に、一方が急死した場合などには遺族から返還を求め、あるいは遺族に対して返還すべき場合が多いが、その額は結婚準備のために相手が支出した費用などを勘案して決める。

◎結婚してからの場合
@結婚が開始されれば、結婚届が出ているか出ていないかにかかわらず、結納の返還は問題にならない。ただし慰謝料や財産分与の問題に際して、結納額を考慮することがある。
A新婚旅行から帰ってすぐ離婚したなどの場合には、結婚に至らなかった場合と同様の考えで処理することもあるという。
なお破談にともなう慰謝料や損害賠償について裁判を起こす場合、家庭裁判所に調停を申し込むことと、地方裁判所に普通の裁判を起こすことの2つの方法がある。


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