神前結婚式



(4)結婚式の順序
 式の次第は、それぞれの神社や式場によって多少の違いがあるが、だいたい、次の順序で行われる。服装は斎主は斎服あるいは狩衣又は浄衣、典儀.祭員及び伶人(演奏者)は狩衣(かりぎぬ)又は浄衣、巫女は水干又はちはや(いずれも緋袴)を使用する。
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@参入

 祭務所より、係員の先導でまず先頭に新郎新婦、その後に媒酌人夫妻、新郎両親、新婦両親が続き、さらに兄弟姉妹と伯父、伯母などの親戚の順に式場へ進む。

A参進
 式場である社殿に入り、神前に向かって右側に新郎方、左側に新婦方が並び一同着席。この場合の着席順は、参進した順、すなわち新郎新婦と血のつながりの濃い者から順に神前に近い上座に着く。

B修祓の儀
 斎主(神主)が入場し、典儀(儀式をつかさどる人)が開始を告げて式を始める。参列者を清めるため、斎主がお祓いをするので、一同起立をし、頭を垂れてお祓いを受ける。終ったら一同着席。

C祝詞奏上
 斎主は神前に進み、新しい夫婦の門出を祝うため、二人が結ばれたことを神に感謝し、末長く幸せに暮らすようにとの意味をこめた祝詞を奏上する。この間一同起立したまま受ける。

D三献の儀
 祝詞奏上が終ると、三三九度の杯が交わされる。一人の巫女が金箔長柄の銚子をもち、もう一人の巫女が提子を持ち、神職が三つ組の杯をのせた三方をささげて、新郎・新婦二人の前の案(玉串を置く机)の上におく。新郎新婦は起立して神酒をいただき、一つの杯を三口で飲む。順序は、まず新郎が小の杯を飲み新婦へ、中の杯は新婦が飲み新郎へ、大の杯は新郎が飲み新婦がこれを受けて飲むのが一般的である。

E指輪交換
 指輪交換は、巫女が三方に指輪をのせて持ってきたら、新郎が新婦の左手薬指に贈り、同様に新婦が新郎に贈る。

F誓詞奏上
 新郎と新婦は、並んで玉串案の前に進み、新郎は誓詞を持って読み上げる。新郎が年月日と姓名を読み上げたら、続いて新婦は自分の名前をつけ加える。

G玉串奉奠
 誓詞奏上が終ると、新郎新婦は玉串を持ち、揃って神前に進み、一礼したのち、神前に捧げてから二拝、二拍手、一拝を行う。この時は参列者も起立して拝礼する。新郎新婦に続いて両家の参列者または代表が行い、最後に媒酌人夫妻が玉串を奉奠する。

H神楽(かぐら)舞
 玉串奉奠が終ると、式場によっては、神楽舞が神前で奉納される。

I親族杯の儀
 参列者一同起立し、新郎・新婦側それぞれの上座のほうから順に巫女がお神酒を酌し、媒酌人夫妻に注ぎ納め、巫女の合図で一斉に杯をあげる。これは親族固めの杯ともいう。

J斎主祝辞
斎主からお祝いの挨拶がのべられる。

K新郎・新婦退場
斎主の挨拶が終ったら、先導に従って新郎・新婦、媒酌人が退場し、続いて参列者一同揃って起立し、神前に一礼して退場する。

2 式典解説

(1)着席の順序
 式場に入ってからの着席は、両家の親族が神殿をはさんで向かいあって着席するところと、神殿の方に向かって着席するところとがあるが、いずれの場合も、神殿に向かって右側が新郎方、左側が新婦方となる。ただし、婿取の場合は嫁方の親族が向かって右側となる。

(2)修祓(おはらい)
 おはらいとは、災厄を除くために神社などで行う神事をいうが、結婚式で行われるおはらいは、式場である神殿に新郎新婦をはじめ一同が入場し着席したときに、参列者を清めるために行われる。おはらいの受け方は、一同が着席すると、伶人(雅楽を奏する人)の奏楽裡に、斎主以下祭員が参進し、斎主が神座を一拝して席に着くと、おはらい(修祓の儀)が行われる。祭員が幣帛を持って前に立ったら、参列者一同起立して、頭を垂れ、おはらいを受ける。おはらいが終わったら、一同着席する。

(3)祝詞(のりと)
 祝詞は、祀られた神に奏上してそのご加護を祈り、これからの人生を祝福する呪言である。祝詞の現存する最も古いものは、「延喜式」に採録されている「祈年祭」以下の28編と、「台記別記」に収められている「中臣寿詞」一編で、宣命体で書かれている。おはらいが終わると、伶人が奏楽中に祭員が神饌を供え、ついで斎主が神前に進んで祝詞を奏上する。

(4)三献(さんこん)の儀
 三三九度の杯は、「三献の儀」ともいわれ、本来は、少年酌人が新婦側に、少女酌人が新郎側について酌をした。神前結婚式の場合は、二人の巫女によってとり行われる。
祝詞奏上が終わると三三九度の杯が交わされる。
@祭員が神前からお神酒を下げ、銚子に移すと、二人の巫女が別々に、三方にのせた三つ重ねの杯と長柄の銚子をもって、新郎の前に進む。
A巫女が一の杯を新郎に進め、新郎は左手に一の杯をとって右手を添え、巫女が三回に分けて注いだお神酒を、三口に分けて飲み、飲みほしたら、巫女に返す。
B巫女は新婦の前に行き、新婦も同じように杯を受けて、三口に分けて飲みほして巫女に返す。
Cその杯はふたたび新郎の前に運ばれ、新郎が受けて巫女に返す。
D巫女は、これを三方の左側に置き、一の杯を納める。
E今度は二の杯を新婦が先に受けて飲みほし、巫女に返す。
F次に新郎は二の杯を受けてほし、巫女に返す。
G二の杯をふたたび新婦がこれを受ける。
H三の杯を新郎が受けてほし、新婦が三の杯を受けてほし、再び新郎が受けてほし、杯を巫女が三方に納め三献の儀が終わる。

(5)略式の三献の儀
 現在の三献の儀は、次のように行われるのが一般的である。一人の巫女が金箔長柄の銚子をもち、もう一人の巫女が提子を持ち、神職が三組の杯をのせた三方をささげて、新郎・新婦二人の前の案上にのせる。次に神職が一番上の小さい杯をとって新郎に渡し、二人の巫女がお神酒を三度につぐ。新郎はこれを両手で受けて飲みほすと、神職がこれを受けて新婦に渡す。このように杯の受け渡しは神職により、酌は二人の巫女によってとり行われる。三三九度の儀には、新婦から始める場合もあるが、この場合は、前に述べた順の逆になる。

(6)誓詞
 三献の儀(三々九度の杯)が終わると、新郎新婦の誓詞奏上となる。なお、指輪交換がある場合には、三献の儀、指輪交換、誓詞奏上の順となる。誓詞奏上とは、新郎新婦が神前へ進み出て新郎が誓いのことばを読みあげることをいう。本文は新郎が朗読し、新婦は目で一緒に読むようにし、新郎が年月日、姓名を読みあげたら、新婦は自分の名前をつけ加える。

◎誓詞文例
 誓詞は、おおよそ次のようなものである。
 「今日のよき日に、わたくしどもは○○神宮の大御前において結婚の式をあげます。
今後ご神徳をいただきまして、相和し、相敬い、夫婦の道を守り、苦楽を共にし、平和な生活を営んで、子孫繁栄のみちを開き、終生変わらぬことをお誓いいたします。
なにとぞいく久しくご守護下さいますようお願い申しあげます。
平成O年O月O日
              夫OOOO  妻OO」


(7)玉串奉奠
 誓詞の奏上が終ると玉串奉奠を行う。玉串とは榊の小枝に「四手」と呼ばれる白い紙片をつけたもので、奉奠とはうやうやしく捧げることをいう。「四手」とは、清浄な場であることのしるしで、和紙を重ねて折り四角形に切ったものである。
 まず斎主が玉串を奉って拝礼し、祭員も列席する。次に祭員がはじめに新郎新婦のところに玉串を渡し、新郎新婦はそれぞれ榊を玉串案の上に置く。

◎神前礼拝の作法
@玉串案の数歩手前で一礼する。
A玉串を捧げたら、右足から一歩さがり二拝二拍手一拝する。
B新郎新婦は互いに背を向けることのないように、内まわりに回る。


(8)玉串の捧げ方
@新郎新婦の場合
 新郎新婦は、渡された玉串を神前にささげる。まず榊の表を上に向け、右手で榊のつけ根の方を横から持ち、左手で葉先の方を少し高めに下から軽くささえるようにし、胸高に持って神前に進む。玉串案の数歩手前で立ち止まり、一礼してから、葉先を右に回し右の手のひらに葉の方をのせ、左手を枝のつけねまでおろし、枝のつけねを神前に向けて、玉串案の上に捧げる。神前に向かったまま右足から一歩さがって二拝、二拍手、一拝し、互いに向き合うように中回り(花婿は左回り、花嫁は右回り)して、新郎新婦一緒に席に着く。

A媒酌人夫妻、親族代表の場合
 新郎新婦がさがったあと、両家の参列者または代表者が同じく神前に進み、玉串を奉奠し拝礼する。両家代表者の場合は参列者一同、自分の席でともに拝礼する。両家の親族代表(主に新郎の父親)のあと、終りに媒酌人夫妻が玉串を奉奠する。また、新郎・新婦と媒酌人夫妻同時に神前に進み、続いて玉串奉奠を行うことがある。この時は親族代表があとになる。式場によってはこの2つを省略して、新郎新婦の奉奠に合わせ、各自の席で礼拝するところもある。


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