荷物送り


 嫁入り道具を新郎側に運びこむことを荷物送りといい、昔から礼法などもやかましく、また今日でもその習慣が残されている地域がある。最近では、荷物送りも忙しい媒酌人の手や使者の手をわずらわせず、親しくしてる人とか、両家の立会いだけで、結婚式の一週間前から2、3週間前までに行うことが多い。

(1)荷物目録の書き方
 荷物目録は、結納の目録と同様、奉書紙または美濃紙を二枚重ねにして、筆で書くのが正式。品物の個数は、奇数となるようにする。荷物目録の書き方は、初めに「荷物目録」と書き、次の行から「一、総桐和箪笥 壱棹」、「一、整理箪笥 壱棹」というように品名と個数を書き並べ、終りに「以上」と記す。
 また、品数が多くて、一枚に収まりきれないときは、用紙を重ね、右端を紅白の水引で2か所をとじて書く。荷物目録を書き終わったら、同質の紙で包み、「荷物目録」と上書きする。

(2)荷物を送る
 嫁入り道具を送る人を荷宰領と呼ぶが、主に嫁側の身内の若い人に依頼することが多い。荷宰領は荷物目録とかぎ袋を預かったら、荷物の積み込みを指図し、荷物目録と照らし合わせ、確認したうえで新郎方へ送り届ける。新郎側へ着いたら目録とかぎ袋を渡し、全部の荷物が運び込まれたのを確かめ、新婦側に報告する。従来、媒酌人も最初新婦宅に行き、荷物の積み込みに立ち合い、荷物目録とかぎを預かって新郎宅に行き、運び込みに立ち合ったが、最近では簡略化し、初めから新郎宅に行き、荷物の到着を待つことが多い。
 荷物を積み終わったら、出発前に荷宰領に祝い酒をふるまい、新婦の父親が「本日はお忙しいところお役目ご苦労さまでございます。目録どおり先様にお届けくださいますよう、なにとぞよろしくお願いします」とあいさつし、荷物目録とかぎ袋を渡す。荷宰領は目録の荷物を照合し、「お荷物、目録どおり、確かにお届け申しあげます」とあいさつし、手伝いの人たちには祝儀を渡す。
201niokuri.gif   201niuke.gif

(3)荷物を受け取る時の作法

 新郎側では荷物を置く場を整え、服装を改め、荷物が到着したら新郎は、父親や先に到着していた媒酌人とそろって玄関先に出迎える。

◎口上
 まず荷宰領が「本日はお日柄もよく、まことにおめでとうございます。OO家からのお荷物、私が名代としてお届けにあがりました。どうぞお改めのうえお受け取りくださいますように」と口上を述べ、媒酌人に対し、「これが目録と荷物のかぎでございます。どうぞお納めください」と目録とかぎ袋を差し出す。媒酌人は「お役目まことにご苦労さまでございます」と受け、荷物を改め、「OO家からお荷物が届きました。これが目録とかぎ袋でございます。お改めのうえお受け取りください」と新郎側に目録とかぎ袋を渡す。
 これに対して新郎側は「お荷物、確かに目録どおりお受けしました。幾久しく受納いたします。本日はお役目まことにご苦労さまでございました」とお礼を述べる。

◎接待の方法
 荷物を運び終わったら、新郎側では媒酌人と荷宰領に酒肴でもてなす。運転手や手伝いの人にも別室で食事を出すが、略式に茶菓をふるまい、祝儀とは別に酒肴科を包むこともある。
 そのあと、媒酌人と荷宰領は再び新婦側に帰り、無事に荷物を送り届けたことを報告し、新婦側でも、新郎側と同様に酒肴をふるまい、労をねぎらう。新郎側では預かった荷物を、油単(覆い)などをかけたまま並べておく。

(4) 略式の荷物送り
 従来のしきたりや格式にとらわれず、今日では荷宰領や媒酌人の手をわずらわせずに、新婦が直接出向いて荷物の置き場所を指示したりして運び込むほうが一般的である。また大きな家具や電気製品などは、買ったお店から直接荷物送りの日に合わせて、届け日を指定して新郎宅に届けるケースも多い。この場合も一応目録を作っておくと、届いた品物の確認ができる。荷物が届いた時には、配達して来た人にも祝儀を出すことがある。

(5) 婚家への土産
 昔は嫁入りの時に、婚家の家族に家風に従うことを意味して白生地や反物を贈る習慣があったが、最近はほとんど行われなくなっている。土産を贈る場合は、身近に喜んで使ってもらえるようなものを選ぶ。例えば父親にはネクタイ、カフスボタン、母親には帯締・ぞうり、兄弟には万年筆、ベルト、姉妹にはハンドバッグ、セーターなどを用意し、両親へは多少高価なものを贈る。範囲は両親・兄弟姉妹にはそれぞれ個人あてにする。土産は一つずつ包み、紅白の水引きを結び切りにかけ、表書きは「寿」とする。下に自分の名前を書き、左肩にあて名として「父上様」「姉上様」「OO様(弟・妹の名)などと記すのが正式である。



BACK