婚約 |
1 お見合い 男女の仲を取り持つお見合いという制度は、江戸時代の庶民のなかで生まれたものである。お見合いの場所は、寺の境内などに設けられた水茶屋で行われたという。昭和6年に発行された 「婚礼画報」には、お見合いを次のように書いている。 「郊外散策などでするお見合い」 @家庭を訪問するように窮屈でなく、観劇ほど人目に立たない、郊外や公園を散策しながらのお見合いは、大変いい方法だと思います。(中略)D諾否の意見は、後で媒酌人に言うべきもの、会見中たとえ気にいらぬことがあっても、不快な印象を与えるような挙動があってはいけません」など今日に通じるものがある。 (1)お見合いの日取りと時間の決め方 お見合いの日取りは、双方の都合のよい日を選んで決めるが、昔からの慣習で「吉日」を選んで行われることが多い。最近では縁起を担ぐ人も少なくなったようだが、念のために日取りを調べておくほうが無難である。お見合いの時間は昼間に行うことが多く、日曜日など一緒にお茶を頂くなど、2時間くらいを予定する。また待ち合わせの場所には、交通の便のよいホテルのロビーやレストランなどが選ばれる。 (2)付添い人とお見合いの費用 お見合いに付添う人はそれぞれ一名で、男子には母親、女子には父親という組合わせが無難とされている。またお見合いの費用は、当事者双方が負担するのが一般的である。当日、仲介人が一緒の場合には、仲介人に食事代等を立替えていただき、あとで双方が出し合ってお返しするという方法がとられている。 (3)お見合いでの席次 |
お見合いでの席次は出席者の数やお見合いの場所によって異る。仲介人は立場上座る場所を指示することになる。最近では席次にこだわらず、本人同士が話しやすい席に着くことを主にした席次にする傾向がある。また女性には落ち着ける席を与えるとか、光線が強過ぎたり、影になったりしないように気をつけて席次を選ぶような配慮をしている。 (4)仲介人の心構え 仲介人は両家の事情や両人の性格を十分に周知した上で、二人を引き合わせる必要がある。生涯にわたって二人を保証人として努めていく気構えが大切である。 一般に媒酌人には、実質媒酌人と頼まれ媒酌人がある。実質媒酌人は、お互いに未知であった二人を紹介して交際のチャンスを与え、婚約、結納、挙式の世話をし、式の終わった後も、ときには親代わり的な存在として何かと力になり、相談にものる大変に骨の折れる責任の重い役割である。これに対して頼まれ媒酌人は、挙式当日にお願いする場合で、社会的地位のある方にお願いするといった場合の媒酌人である。 (5)仲介人に対するお礼 仲介人が結納から結婚式の媒酌までお世話した場合には、結婚式のあとでまとめてお礼する場合もあるが、お見合いの結果が不首尾に終わったった場合には、なるべく早い時期に依頼方、あるいは双方がお礼に伺う。(媒酌のお礼については16章を参照)お礼には、仲介人が現金を受取ってくれない場合や、現金を差し上げるのは失礼だと思われるような場合には、相当額の品物を贈っている。 しかし、仲介には費用や時間がそれなりにかかるので、品物よりお金にした方がよいと思われる。お金でお礼をするときは、表書きに「御礼」または「薄謝」と上書きし、菓子折り程度のものを添えてお届けする。 2 決め酒(取り決めの固め) (1)決め酒の意味 今でも地域によって、両家の結婚の意思が固まると、婚約のしるしとして「決め酒」あるいは「済み酒」を行う習慣が残されている。この風習は金沢では「一本酒」、阪神地方では「固めの儀」あるいは「扇子納め」という名で残っている。これは新郎側が、未来の妻の実家に出向いて、互いに酒を交わしあうことにより結婚の意思表示を行うという意味をもっている。 (2)決め酒の納め方 昔は媒酌人夫妻が新郎方より酒と肴を持参して新婦方に伺ったが、今日では両親や本人が伺うのが一般的である。持参するものは日本酒一本と肴、又は「酒肴料」。それに手みやげなどを持参する場合もある。酒の水引きは紅白で表書きは「清酒」とする。進め方は、初めに新郎は新婦側に自分の両親を紹介する。その時父は、「いつも息子が大変お世話になっています。今日は是非お嬢さまを当家に迎え入れたく、お願いに上がりました」と口上を述べ、承諾があれば持参した酒をくみかわす。 (3)服装 男性は略礼服、女性はワンピース、スーツ、訪問着など。 3 媒酌人 媒酌人は次の3つに大別できる。 @二人を結びつける実質的な仲人 A結納を交わすときに両家の仲介を務める仲人 B結婚の媒酌の労をとる文字通りの媒酌人である。 |